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29話 一番赤い女

Author: 九重有
last update publish date: 2026-07-09 06:38:43

白い声を閉じても、耳の奥にはまだ甘い息が入っていました。

ほめて

その言葉は画面から消えたあとも、愛梨沙の中で小さく揺れていました。

けれど指は、麻里亜の画面へ戻っています。

@suzune_room7

その白い名前を閉じて、愛梨沙はもう一度、麻里亜のページを開きました。

@maria_melt1

今日中に返事して

無視したら、会社の方に送る

灰色の背景に浮かぶ文字は、さっきよりも濃く見えました。

文字そのものは白いはずなのに、目の奥でじりじり焼けます。

投稿の中に、メッセージ画面の一部が写っていました。

画面の下に、小さな添付マークが見えます。

それだけで、愛梨沙の喉が詰まりました。

(ひとつ

たったひとつで

拓哉さんの生活が汚れるの?

たったひとつで

鴻上さんって呼ばれる声が

違うものになるの?

だめ

そんなの

まだ開けちゃだめ)

愛梨沙はスマホを握る手に力を入れました。

白い手袋のしわが指の根元に寄りました。

白い声は、拓哉の耳の奥で甘くほどけるだけでした。

でも麻里亜の指先は違います。

会社へ

奥さんへ

知らない人たちの目へ

拓哉が普通の顔で立っている場所へ、爪の先が伸びてい
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